Venture Fund IIIを発表

本日、当社の最新のベンチャーファンドであるVenture Fund IIIを発表できることをうれしく思います。総額4億3000万ドル（約590億円）の当ファンドは、アーリーステージの機会に50万～2500万ドル、当社のエバーグリーン・リキッドファンドと合わせ、レイターステージのプロジェクトに最大1億ドル以上を投資します。

当社は暗号資産（仮想通貨）へ約５年間投資してきて、イノベーションが次第に高度になる様子を目の当たりにしました。当社はディープテックやインフラストラクチャーへの投資を継続する一方、直接消費者に向けた商品や巨大な消費者向け市場の再編につながる商品にますます時間をかけるようになっています。当社が最も注目している分野のいくつかをご紹介します。

プルーフ・オブ・フィジカル・ワーク（PoPW）

以前にも述べたように、暗号経済プロトコルの最も強力な特徴の1つは、世界中の誰もが共有された目標に向けてパミッションレスに貢献できるインセンティブ構造を生み出せることです。これらのインセンティブ構造は、具体的な目標を達成するため、細かく調整して大規模な連携を促進できます。暗号技術の革新の大部分はデジタルコミュニティや経済の調整に焦点を当てていますが、トークンはまた、デジタルの世界だけでなく物理的な世界でも、資本形成や人間同士の協力におけるイノベーションの機会をもたらします。

このテーマを「プルーフ・オブ・フィジカル・ワーク」と当社は呼んでいます。このテーマに合致するプロトコルは、実世界のインフラストラクチャー構築に使われる検証可能な作業をするためのインセンティブとなります。当社ポートフォリオで今、最も注目すべき2つの分野はヘリウムとハイブマッパーですが、この分野ではこのモデルで既存産業（例えば、Web3 AirBnB、ウーバー、マイクログリッドなど）をディスラプトするプロジェクトを積極的に探しています。

データDAO

データDAOは、その精神はプルーフ・オブ・フィジカル・ワークと共通するものがありますが、物理的なインフラでなく、データインフラに関するものです。

大量の断片化されたデータも、それを集計することで、各部分を合計した以上の価値が生み出されます。現在、データを集計できないのはそれが機微情報または個人情報だったり、アグリゲーターがユーザーによるガバナンスの対象でなかったりするためです。暗号資産は、１）ユーザーがデータを提供するよう、現在のリスクリターン特性を上回る強いインセンティブを生み出し、２）アクセスとインクルージョンを拡大する、分散型でパミッションレス、トラスト最小化型のデータ仲介を生み出し、３）統治力を少数の手から多くが参加するコミュニティ（暗号の世界で言うところの信頼できる中立性）へと移すことで、この問題を解決します。暗号資産のインセンティブは、各部分の合計よりも価値のあるデータの参加と解放を招く鍵となります。

最近当社は初のデータDAO、デルフィアに投資しました。デルフィアは投資家が提供するデータを集計して取引アルゴリズムを改善するもので、新しい投資家や貢献者が参加する（例、DAO）たびにより賢くなります。

クリエイターの収益化

クリエイターの収益化という考えは確かに目新しいものではありませんが、実際にはそうした機会は目に見え始めたばかりで、その基盤となるプラットフォームやレールは十分に成熟しています。次世代のクリエイター収益化ツールの原型は今まさに発明されているところです。現在、最も効果的で高利益のモデルを発明するため世界規模で実験が行われていますが、いったん基盤が固まればこのゲームに参入しようとする何百万人ものクリエイターが待ち構えています。クリエイター収益化の機会はまずはゆっくりと、その後は一気にやってくるでしょう。

これからは、暗号資産を決済レール、DeFi（分散型金融）、NFT（非代替性トークン）、ソーシャルトークンなどに活用して、何百万人もの新しいクリエイターらが有意義な新事業をさまざまなオンラインプラットフォームで立ち上げることでしょう。例えば、カイルは2021年12月のマルチコイン・サミットの基調講演において、音楽VC DAOのアイデアについて詳しく説明しました。

当社はすでに複数のクリエイター収益化ツールやプラットフォームに投資しており、それらには、Solana上のNFT基準であるメタプレックス、web３デジタル・ストリーミング・プラットフォームのオーディアス、人やプロジェクト、アイデアのトークンを立ち上げるオープンソース・プロトコルのStrataプロトコル、NFT楽曲プラットフォームのFan Tigerなどがあります。

コンシューマー製品

基盤となるインフラ・システムの成熟に伴い（Solana、Aptos、イーサリアムなど）、あらゆる形式の消費者向けアプリの構築が容易になりつつあります。さまざまなweb２起業家が暗号資産を発見し、新しい消費者行動を解き放つ暗号資産システムの特性を活かして、世界に通用する消費者向け体験の構築を目指しています。

当社はいくつかの消費者向けソーシャル製品に投資しており、それらはまだ未発表ですが、今後ユーザーエクスペリエンスの面で業界の担い手となり、世界に通用するクリプト・ネイティブの消費者体験を構築する方法を世界に示すものと期待されます。

知財上の協働に向けた新しいビジネスモデル

暗号資産の最も優れた能力の１つで、よく誤解されるのが、新しい形態の資本形成の仕組みを可能にできるという点です。マイニングの先駆となったビットコインに続き、その後はICO、エアドロップ、流動性マイニング、NFTミント、ヘリウムのプルーフ・オブ・カバレッジなど、資本形成関連のイノベーションの波が押し寄せています。

インターネット以前には、米国にはごく少数の主要メディア会社（ハースト、NYC、シンクレア、ニュース・コーポレーションなど）しかありませんでした。しかし、この20年間で、メディア業界はブログ、ニュースレター、ソーシャルメディア（SNS）などの台頭によって劇的に変化しました。現在は世界に数十億ものメディアソースがあります。

同様に、現在では米国にごく少数の主要知財スタジオ（ディズニー、マーベル、コムキャスト、ワーナー、パラマウントなど）しかありません。次に予想される知財スタジオ業界の変革の波はクリプト・ネイティブでコミュニティー・ドリブンになると当社は予想しています。

Web3インフラストラクチャー

当社はこれまでもWeb3スタック（こちら、こちら、こちらをご覧ください）とその機会について詳しく説明してきました。2018年前半のLivepeerとThe Graphへの投資を皮切りに、当社はWeb3インフラストラクチャーへの最も積極的な投資家の１つとなっています。

当社は引き続きコアWeb3インフラストラクチャーに投資しており、最近ではCeramicやFluenceに投資したほか、まだ未発表の投資先もいくつかあります。

オープンファイナンス

オープンファイナンスは暗号資産にとって巨大なテーマの１つだと当社は考えます。オープンファイナンスはしばしば、分散型金融（DeFi、当社はオープンファイナンスのサブブセットとして位置付け）とも呼ばれ、暗号資産のイノベーションにとって非常に重要な環境です。2018年から2021年にかけて、当社は「DeFiの夏」と呼ばれるDeFiの急成長期やイノベーションの爆発を目の当たりにしてきました。その後市場は冷え込みましたが、消え去ったわけでないことは確かです。当社は、既存のツールに取って代わる、または全く新しいカテゴリーを生み出すような新たなDeFiツールを作ろうとしている創業者と毎日話をしています。イノベーションは今も最前線にあって健在です。

DeFiレールの活用を通じてより包括的でオープンな市場へと（再）構築することが可能な市場は多くあります。その例の１つはBetDEXでしょう。これはスポーツ賭博を中心とした市場で、現在は厳しく制限されています。もう1つはDFlowで、暗号資産を用いたペイメント・フォー・オーダーフローの先駆者です。

当社はこれからもこの分野に投資を続けて、コンポーザビリティ（構成可能性）を活かし、クリエイター収益化やパミッシブル・ファイナンスをテーマとして構築された高度なアプリが登場することを期待しています。

インド

当社投資チームのシェイヨンとヴィシャルはいずれも、インド、ドバイ、およびその隣接市場に多くの時間を費やしています。

インドはweb3技術の普及に特に適していると思われます。これは1）米中の巨大テック企業にとって市場に食い込むことが難しいこと、２）インド特有のweb3事業を構築・所有する機会があること、３）技術に精通して英語を話す、比較的若い年齢層が多い人口構成、４）リモートワークの普及、が理由です。

またインドの現地市場に適した製品をデザインするにはインドの起業家が最適と考え、当社はFanTigerなどインドのWeb３スタートアップ企業に多額の投資を行う予定です。

DAOツーリング

スケーラブルな利益が一致する暗号資産とオンラインコミュニティの交差点で今、初期の実験的な試みが行われ始めています。暗号資産は世界中の人材や資本プールを活用できるため、こうしたコミュニティの形成の起爆剤となっています。しかし、このビジョンを大規模に実現するには、連携のためのインフラストラクチャーを改善する必要があります。当社はこの分野を積極的にフォローし、当時者らに働きかけ、投資しています。

当社との協働

当社はここ数年で大きく成長してきましたが、運営のあり方は変わっていません。今もテーマ主導で、創業者第一の方針を維持しています。誰が投資をリードするかにかかわらず、投資チームの全メンバーが、投資先の全企業と直接関わります。最高の暗号資産アイデアを成功させるため、当社のスキルセットを結集して活用します。

時には常識に逆らうことで反発を受けることもありますが、当社が最も大切にするのは創業者との信頼関係です。当社は組織をあえて小規模に保ち、焦点を絞れるようにしています。各チームメンバーは、差別化された新たな方法でチームに貢献できるよう選ばれた者たちです。当社は、何があっても集団思考は回避し、他の投資家にはできない方法で付加価値をもたらすことに努めます。もしあなたが上記のいずれかのテーマに合致するものを構築しているのであれば、ぜひアイデアをお聞かせください。当社のDMはオープンです。メールまたはここに記載するTwitterで、投資チームのメンバーにご連絡ください。

ご連絡をお待ちしています。

開示: Multicoinは、その投資活動に関連する利益相反の特定と効果的な管理のため合理的に設計された書面によるポリシーや手続きを確立・維持・実行しています。また、Multicoin Venture Fund IIIとは異なる投資戦略に従う、異なる投資ビークルに、同様の、または関連する投資を保有する可能性があります。