その概要を以下に紹介する。19ページのフルレポートをダウンロードするには、PDFリンクをクリックしてください。
導入
分散型台帳は簡単に拡張できない。その事実は、ここ数年、ビットコインやイーサリアムなどがプラットフォームの高速化やスループットの向上を図る中で、深刻な課題に直面していることからも容易にうかがい知ることができる。
本問題は、スケーラビリティのトリレンマとして最もよく理解される（本考えは、Vitalik ButerinとTrent McConaghyによって初めて公式に示された）。スケーラビリ ティのトリレンマとは、あらゆるノードがあらゆる取引を検証するブロックチェーンシステムは、ブロック生成の分散化（DBP）、安全性、スケーラビリティという3つの特性のうち2つしか持ち得ないというものである。これらの特性は、以下のように定義できる。
- DBPはブロック生産者の数として定量化できる。
- 安全性は、活性度やトランザクションの順序に影響を与えるビザンチン攻撃対策のコストとして定量化できる。安全性とは、暗号署名の完全性や、第三者が公開鍵から秘密鍵のセットを導出する能力を指すものではないことに注意すること。
- スケーラビリティは、システムが処理可能な単位時間当たりのトランザクション数として定量化できる。
Ethereum、Dfinity、Polkadot、Kadenaなどのプロジェクトは、シャーディング、代替コンセンサススキーム、その他の技術によってスケーラビリティのトリレンマを解決しようとしているが、本トリレンマを解決できるライブプラットフォームはまだ存在しない。仮に、これらのプロジェクトのいずれかがスケーラビリティのトリレンマを解決できたとしても、市場はそれを気にしないかもしれない。ユーザーは、特定のユースケースにおいて、より良いパフォーマンスやより簡単なユーザー体験のために、ブロック生成の分散化や安全性のトレードオフを受け入れることも十分にあり得る。
分散化は、任意の当事者がデータベースを変更できないようにするために価値を有する。分散化が進むと、結託してデータベースを改ざんすることが難しくなる。ユースケースによって必要な保護レベルは異なる。ビットコインは検閲に強い貨幣であり、主権者級の保護、つまり大国家による攻撃に耐えられるように設計されている。しかし、ほとんどの分散型アプリケーション（dApps）では、これは必要ない。これらのdAppsには、プラットフォームグレードの保護、つまり、いかなる当事者によっても制御されないグローバルかつ中立的なデータベースが必要である。
Delegated Proof of Stake (DPoS) は、ブロック生産を少数の既知の半信頼のエンティティに集中させ、プルーフ・オブ・ワーク（PoW）や他のプルーフ・オブ・ステーク（PoS）ブロックチェーンよりも数桁高いスケーラビリティを実現するものである。この分析では、DPoSの特徴及びトレードオフを検討する。
委任型の関与の証明（DPoS）
DPoS（Delegated Proof of Stake）は、2013年にDan Larimer1が発明したコンセンサスアルゴリズムである。DPoSはもともと、ラリマー氏の最初のブロックチェーン・プロジェクトであるBitSharesを動かすために発明されたものである。同氏は、それを2つ目のプロジェクトであるSteemで磨き上げ、約1年前から取り組んでいるEOSでさらに磨きをかけている。ラリマー氏がDPoSを発明し、アルゴリズムを進化させ続けている一方で、他のいくつかのプロジェクトがDPoSを採用し、変更を加えている。
DPoSでは、ネットワークトークンを保有する者は、ブロック生産者を選出するための投票を行うことができる 。投票は投票者の出資比率によって重み付けされ、最も多くの票を得たブロック生産者候補がブロックを生産する方々になる。また、ユーザーは、自分の議決権行使を 代理で投票できる人 である他のユーザーに委任（「代理人」）することもできる。DPoSは、トークン保有者の参政権を伴う流動的な代表制民主主義である。DPoSは、従来の組織階層を形式化し、デジタル化したもので、完全に透明な形で運営されていると考えることができる。民主主義とコーポレート・ガバナンスの双方に本稿の範囲外の問題があるが、DPoSの魅力は、オープンソースのプロトコルであるため、多数派と対立した場合、ユーザーがフォークできることである。しかし、民主主義や企業、他の組織構造などについては、同じことは言えない。DPoSは、多くの伝統的なガバナンスモデルのアイデアを採用しているが、最終的にははるかに柔軟かつ透明性の高いものとなっている。
ブロック生産者はいつでも投票によって選ばれる可能性があるため、収入と評判を失うという脅威が、悪行に対する主なインセンティブの一つとなっている。さらに、DPoSでは、斬撃条件も簡単に実施することができる。従来のPoS実施の多くは、ユーザーがネットワークへの出資比率に比例したブロックを生成することができる。DPoSは、ユーザーが出資比率に比例した票を投じ、ブロック生産者を決めることができる。ブロック生産者自身は必ずしも大きな出資を必要としないが、 ユーザーからの投票を受けるために競争する必要がある。
DPoSはブロックチェーン全体を動かすことができるほか、子チェーン、サイドチェーン、プライベートブロックチェーンなどのコンセンサスアルゴリズムとして利用することができる。DPoSはEthereum Plasmaチェーン内のコンセンサスに利用される可能性があり、DPoSはパリティで承認された「Proof of Authority」コンセンサスメカニズムと多くの類似点がある。また、 Cosmosゾーンのようなアプリケーションに特化したチェーンのソリューションにもなり得る。
DPoSは、分散化には経済的にもパフォーマンス的にもコストがかかることを認識し、スケーラビリティと引き換えに半中央集権化を選択した。もしDPoSシステムが、分散型データベースが必要とする検閲への耐性、パーミッションレス性、トラストレス性を提供できるのであれば、DPoSは膨大な種類の分散型アプリケーションに適していると言えるだろう。検閲に絶対的に強いデジタルゴールド、ピアツーピアのデジタルマネーなど、特定のユースケースでは、パフォーマンスを犠牲にして分散化を優先させるというトレードオフが意味を持つかもしれない。大半のアプリケーションでは、スケーラビリティははるかに現実的なものである。
本分析 では、DPoSの特徴、トレードオフ、攻撃ベクトル、ユースケースについて詳しく見ていく。レポートの全文はこちらからダウンロードしてください。
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