エグゼクティブサマリーを以下に示します。当社の全12ページにわたる分析をダウンロードしてください。
エグゼクティブサマリー
Rippleは銀行間決済用のブロックチェーンプロトコルです。他の多くのブロックチェーンとは異なり、Rippleは、既存の金融機関が、世界中で、どんな資産取引も迅速に行えるように設計されています。Rippleプロトコルはネイティブ通貨であるXRPを持っていますが、この暗号通貨は、Rippleネットワークでの取り引き手数料を支払うときにのみ必要となるものです。これは他でも使用することは可能ですが、銀行は、米ドル、ユーロ、他の不換通貨を含むあらゆる資産のIOU取引を直接Rippleネットワーク上で行うオプションがあります。Rippleは、資産の銀行間での自律分散型取引を支えるバックエンドのインフラツールとして主に設計されています。
Rippleプロトコルは、ベンチャーキャピタルで9300万ドルをこえる資金調達をしたカリフォルニア所在のＣ-CorporationであるRipple Inc.により設計、管理されています。将来的にはコントロールを民主化する計画を描いてきましたが、現在はRipple Inc.がXRPトークンの大多数を保有しており、ネットワーク全体で大きな支配権を維持しています。この両方が大きなリスクです。
Rippleプロトコルが従来の銀行間ネットワークに置き換わるチャンスがあると認識していますが、ブロックチェーンのよい利用法であるということと、よい投資機会であるということは別のものであるとしっかり理解しなければなりません。Rippleプロトコルはブロックチェーンのよい利用法ですが、XRPは投資機会としてはよいものではありません。Rippleプロトコルは、何兆ドルもの経済活動に影響を与えることができますが、この活動がXRPで起こる可能性は大変低いでしょう。XRPトークンは、手数料の支払いの他に主な使い道はほとんどなく、Rippleネットワークの使用が増えても価値が上がる可能性は低いでしょう。
Rippleプロトコルの価値についての見方
Rippleネットワークは、既存の銀行間取引ネットワークをブロックチェーンで置き換え、摩擦をなくし、取引と決済時間をスピードアップさせ、コストを大幅に引き下げます。多くの面で、これは、ブロックチェーン技術の完璧な使用事例です。従来のシステムは、時間がかかり、高価で、間違いが起きやすいものでした。銀行は、価値の転送を異なる内部データベース間でコーディネートしなければならないのです。このため、迅速に取引を決済することは非常に困難です。このプロセスは時間がかかるだけなく、銀行の運転資金にも悪影響を及ぼします。銀行は、他国の他の銀行にアカウントを開設し、そこに現地通貨で預け入れる必要がありました。（これらは当方勘定として知られています。）このお金は、銀行がその通貨での支払いが必要になるまで放置され、そこで運転資金の非効率性がおこります。当方勘定に預け入れる余裕のなかったり、アカウントを持たない通貨で支払いを行わなければならない銀行は、その通貨のためにサードパーティーのリクイディティープロバイダに頼らなければなりません。このことにより、銀行はカウンターパーティーリスクを負うだけでなく、しばしば銀行の資本を送金のために数日間も動かさずにおく必要がでてきます。
Rippleにより、銀行はバラバラの複数のデータベースシステムから1つの自律分散型のグローバルデータベース、Ripple元帳への移行できるようになります。銀行は、信頼できる他の銀行と、いかなる資産のIOUでも取引することが可能になり、すべての取引は、1つの共有元帳に含まれます。これにより、取引に、従来のシステムではなし得なかった流動性とスピードが与えられ、銀行の運転資金への制限が大きく解放されるのです。これにより、金融機関にとって大きな問題が解決できます。
XRPユーティリティ
取り引き手数料は、XRPで支払わなければならず、ネットワークで取引を行うために、最低でも20XRP（この記事の公開時でおよそ4ドル）がウォレットになければなりません。これらのメカニズムはネットワークスパムを防ぐために設計されています。さらに、取り引き手数料は（バリデータに支払われるのではなく）バーンされ、XRPをデフレ通貨とします。そして、XRPは、Rippleネットワーク上の即時取引用の「ブリッジ通貨」としても使用可能です。このような場合、XRP機能は、他のブロックチェーンベースの暗号通貨と同じように機能します。銀行は、Rippleネットワーク上でIOUに裏付けされた資産を発行するか、XRPを使用して支払いするかを選択できます。
RippleネットワークによりIOUが迅速に取引できるようなる一方、単一の自律分散型データベースでこれらのIOUを、実際の通貨取引で定期的に決済しなければなりません。かわりに銀行がXRPを使用して支払いを行えば、決済は従来のシステムより格段に速く行うことができます。もちろんこれには、取引を行う両者が互いにXRPを受け取るか、即座にそれを好みの不換通貨に交換することを望んでることが条件となります。これが最大の注意事項であり、XRPに対する悲観論の根本的な理由です。
XRPリスク
クロスボーダー決済機能は、XRPには備わっていません。実際の決済で銀行は、ビットコインやEther、DASHや他の暗号通貨をごく簡単に使用することができます。将来、銀行はブロックチェーンベースの不換通貨で決済を行うようになるか、いずれかの暗号通貨がグローバルな基軸通貨となる可能性が高いでしょう。銀行間決済のためだけに特別の通貨を持つことが魅力的であるはずはなく、むしろ不要な為替リスクをもたらすため、実際には逆効果となるでしょう。銀行は、IOUを広く受け入れる安定したグローバルな基軸暗号通貨で決済したいと願うでしょう。Ripple Inc.はXRPがこの目的を完遂する計画を発表していません。
Ripple Inc.がネットワークサーバー管理を握っており、XRPの大部分を保持しているため、現在の形式では、Rippleはまた重大な中央集権化リスクに直面しています。さらに、複数の研究者が、Rippleのネイティブコンセンサスアルゴリズムのセキュリティに関する不確実性を示唆しています。これらの懸念事項とリスクについては、当社の詳細な分析で説明しています。
結論
XRPは現在、Ripple Inc.が所有している620億XRPを除いて、約85億ドルのネットワーク価値があります。この価値のほとんどは、Ripple Inc.による主要なパートナーシップと顧客発表に起因する投機的な結果であると私たちは考えています。この企業は、これまでいくつかの面で大きな進展を遂げ、次々と世界中の銀行や他の金融機関との重要なパートナーシップに署名しています。私たちはRipple Inc.が提供しているサービスに価値を見出しています。そして、銀行間決済はブロックチェーン技術の最も優れたユースケースの1つであると信じています。
しかし、ブロックチェーン技術がうまく利用されていることが必ずしもチェーンのネイティブトークンの価値を正当化するものではないと理解しておくことが大切です。XRPの場合、ささいな手数料の支払い以外の使い道はあまりないと信じており、そのため、長期的にみて価値を維持し、構築していく可能性は低いと思います。Ripple Inc.が発表を行うたびにXRPトークンの価格は急上昇するでしょうが、このプロトコルのファンダメンタルズによって持続可能なXRPの価値を構築することはないと思います。XRPへの投資は、Ripple Inc.への投資ではありません。この企業はうまく銀行に有用なサービスを提供していく可能性がありますが、XRPの価値は限定的でしょう。これらの理由から、XRPの現在の価格については弱気と見なしています。
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