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スマートコントラクトのネットワーク効果に関する誤解

Kyle Samani
2017年8月28日 | 7 Minute Read

イーサリアムは、間違いなく市場をリードするスマートコントラクトプラットフォームです。これは最歴史が古く、最も成熟しているといえます。おそらく最高のプロトコル開発者を有しており、最高のコミュニティーがあることは間違いありません。開発者たちの関心は高まっており、主要企業がこのプラットフォームに投資しています。明確なロードマップがあるイーサリアムは、この時代の最も優秀な人材によって主導されています。

イーサリアムのネットワーク価値は約300億ドルです。競合先は次のとおりです。

NEO – 20億ドル イーサリアムクラシック – 15億ドル QTUM – 9億ドル Stratis – 6億ドル WAVES – 5億ドル EOS – 5億ドル Lisk – 2.5億ドル

足元価格に基づくと、すべての競合他社のネットワーク価値を合計してもイーサリアムのネットワーク価値の約10~15%にすぎません。

市場価格は、イーサリアムが強いネットワーク効果を有していることを示唆しています。イーサリアムは自称「世界のコンピュータ」で、当然ながらオペレーティングシステム(OS)と比較されます。多くの開発者たちがイーサリアムを使うほど、多くのユーザーがイーサーを欲しがることになり、それがさらに多くの開発者を生み出すことになるのです。

この例えでは、そのダイナミクスのニュアンスを捉えることはできません。イーサリアムなどのスマートコントラクトプラットフォームは、OSではなく、プログラミング言語と比較するべきです。

つまり、OSの例えは供給側(開発者がイーサリアムを選択する理由)と需要側(ユーザーがイーサーを購入する理由)のネットワーク効果を正しく表しているとはいえません。ネットワークセキュリティに関する懸念は有効ですが、それはクロスチェーンのアンカーリングを通じてほぼ緩和できます。

このようなそれぞれの間違った考え方について以下に説明します。

需要側 – ユーザーは気にしない

オペレーティングシステムは、ユーザーがあるOSを選択せず、代わりに別のOS使うことを相互排他的に決定するため、ネットワーク効果を生み出します。デスクトップ上でWindowsおよびLinuxを実行することはできません(仮想マシンは、その必要性または仮想マシンを効果的に活用するための技術的な能力を持っているユーザーはごく限られているため、ここでは考慮しません)。

ユーザーは1つのOSにロックされているため、開発者は当然ながらそのOS向けに開発します。したがって、そのOS向けに良質なアプリが多く生まれて、より多くのユーザーを引き寄せます。この好循環はますます続くことになります。

ユーザーは、どのブロックチェーンを利用しているかを知る必要も、気にする必要もありません。ほとんどのユーザーの場合 、ブロックチェーンは「トランザクションを検証するためにパスワードを入力してください」という、それだけのものです。

分散型アプリケーション(Dapps)を操作するユーザーとして、ブロックチェーンを「見る」ことはありません。ユーザーに見えるのは、ParityまたはMetamaskなどのツールを使用してオンチェーンのトランザクションをトリガーするweb3フロントエンドだけです(web3は厳密にはイーサリアム固有のものですが、以降、この記事ではこれらのツールをweb3クライアントと呼びます)。イーサリアム以外のチェーンに対するWeb3クライアントはまだ存在しませんが、現在構築中か、まもなく利用可能になり、複数のチェーンに対応する予定です。まもなく、ブラウザはマルチチェーンのWeb3クライアントをネイティブに実装することになるでしょう。

Web3クライアント自体によってこの問題がさらに抽象化される可能性があります。Web3クライアントが多くのチェーンをサポートするようになれば、Shapeshift、0xなどの分散型取引所も統合されるでしょう。ユーザーがStratisトークンが必要なDappを使用しようとしてもイーサしかなければ、web3クライアントが取引所でリアルタイムでイーサをシームレスに販売してStraitsと交換し、その後、Web3クライアントはこれらStratisトークンをDappへ送信します。ユーザーは、原資産のトークンについて知る必要も気にする必要もありません。

Web3クライアントは、それが対応するすべてのチェーンに関して、秘密鍵、公開鍵、およびアドレスを取得するために使用するニーモニック・シードを生成します。ユーザーは1つの「パスワード」を記憶または保存するだけで済み、それ以外はすべてシームレスに行われます。

上記のすべてを要約すると、ユーザーはどのチェーンまたはトークンを利用するかを気にする必要はありません。すべてのDappsは、基盤となるテクノロジープラットフォームにかかわらず機能するのです。すべてのチェーンおよびトークンの複雑性は抽象化されて簡素化されます。

供給側 – 相互運用可能なトークンがチェーンを商品化

2つのスマートコントラクトプラットフォームを使用すると、トークンはチェーンの間を移動することができます。ETHトークンはイーサリアムチェーンに限定されません。STRATISトークンをNEOチェーンで利用でき、TezosトークンをWAVEチェーンで利用できるようになります。

その方法は合成トークンを利用することです。

ETHチェーンとETCチェーンに1つずつ既知のスマートコントラクトがあると想像してみてください。X個のETHトークンをETCチェーンに移動したい場合は、ETHチェーンのコントラクトにETHをいくつか送信し、ETCアドレスを指定します。ETHコントラクトがETHを受信すると、CosmosのようなものがETCコントラクトをトリガーして、こちらのETCアドレスにX個のトークンをリリースします。これらの合成トークンはETHともいいます。このシステムは両方向で動作します。

smart-contract-network-effect-fallacy

(この図では、スマートコントラクトが技術的にトークンを発行する方法を正しく説明していませんが、チェーン間での資産の移動方法を示すのに役立ちます。)

この機能はチェーン間の稼働条件を同じにします。どのコインもどのチェーンでも実行できるのであれば、チェーンやトークンを気にする必要があるでしょうか?複雑な側面の多くが抽象化されて簡素化されます。

このメカニズムには明らかな欠点があります。各チェーンのガス代はチェーンのネイティブ通貨で支払う必要があるのです。しかし、ガス代が%ベースで大きな影響をもたらすことはありません。ガス代が取引高の0.1 ~0. 2 %以上だと、チェーン自体が破綻する可能性があります。上記に提案するフレームワークに照らし、「ユーザーはガス代をどのように支払うのか」という質問はもっともですが、トークンチェーンの抽象化のメリットと比較して影響は大きいとは言えません。

クロスチェーンのアンカーリングによるネットワークセキュリティリスクの軽減

トークンがネットワーク価値を失うと、51%攻撃のリスクが増加します。プルーフオブステーク(PoS)コンセンサスシステムではこれは明らかです。また、プルーフオブワーク(PoW)コンセンサスシステムでも同様で、マイナーは、マイニングコストとコイン価値を比較して、どのコインをマイニングするかを選択します。

しかし、ネットワークセキュリティリスクでさえ、クロスチェーンのアンカーリングを通じて緩和することができます。イーサリアムは、チャイルドチェーンからのマークルルートを親チェーンにコミットすることで、このメカニズムをプラズマに採用しています。これは現在、Factomで使われており、Factomは、すべてのビットコインブロックに、独自のチェーンのメークルルートをアンカーリングします。

やがて、ほとんどのチェーンがリスク軽減の一形態として他のチェーンにアンカーするようになるでしょう。ネットワークを攻撃するには、アンカーリングされたネットワークをすべて攻撃する必要があります。これは、単一のチェーンを攻撃する場合に比べて桁違いに困難です。

スマートコントラクトプラットフォームはプログラミング言語のようなもの

ユーザーが基盤となるチェーンを気にせず、トークンが即座にシームレスに取引可能で、トークン自体がチェーン間を移動し、ネットワークセキュリティを維持できるのであれば、チェーン間で差別化するにはどうしたらよいでしょうか。基本的に、開発ツールとガバナンスメカニズムです。

Stratisの目的は一つ、C#開発者がブロックチェーンを使用してできる限り簡単にビルドできるようにすることです。現在、C#の開発者は何百万人もいます。そのほとんどは、Solidity (ネイティブのイーサリアム言語)やTezos用のOcamlを学びたいとは思わないでしょう。C#の開発者は分別をわきまえていない、ブロックチェーン専用の言語を学習すべきだ、と主張することもできるでしょう。例えば、C#はフォーマル・. ベリフィケーションを考慮して設計されていないため、Stratisはおそらくフォーマル・. ベリフィケーションを実装できないでしょう。

一方、JavaScriptはフロントエンド言語として開発されましたが、現在では、Node.jsが提供する最も人気のあるバックエンド言語の1つです。開発者の中には、JavaScriptのように、緩く型付けされた言語を嫌う人もいます。一方、Cのように静的型付け言語が嫌いな人もいます。

現在、主要なプログラミング言語はすべてチューリング完全性を提供していますが、市場では、独自のトレードオフ(読みやすさ、コンパイル済みか解釈済みか、抽象化、メモリ管理、ネイティブパフォーマンス、 並列化性など)を備えた多くのプログラミング言語が必要であることを経験上示しています。

単一のブロックチェーンが、すべてのスマートコントラクト開発のルールとメカニズムを決定すべきではありません。強力なネットワーク効果がなければ多くのスマートコントラクトプラットフォームが繁栄するでしょう。

さて、ガバナンスに目を向けましょう。Dashは、数年間、オンチェーンガバナンスを行ってきました。誰の目にも、非常に良く機能していると見えるようです。Tezosは、Dashのオンチェーンガバナンスのバリエーションを示しています。Dashコミュニティは繁栄、革新、成長を続けています。オンチェーンガバナンスは、ブロックチェーンが常に必要としていたものの、これまでになかったものです。

それを証明する歴史的な反事実現実は存在しません。ビットコインは、過去数年間、明らかに深刻なガバナンスの課題に直面してきましたが、オンチェーンガバナンスがなくても多くのオープンソースプロジェクトが開花してきました。Linuxカーネル、多数のLinuxデスクトップ、Firefox、Wikipedia、Chrome(およびそのすべてのフォーク)、Androidオープンソースプロジェクト(およびそのすべてのフォーク)、WebRTC、イーサリアム自体、およびその他多くのオープンソースプロジェクトは、正式なステークホルダーエンゲージメントモデルがなくても成功を収めています。

サマリー

現在の市場価格は、イーサリアムが他を大きく引き離してスマートコントラクトプラットフォームの市場リーダーになることを示唆しています。これは絶対というわけではありません。需要レベル、供給レベル、およびセキュリティレベルで、イーサリアムの長所と見られている大部分の特徴を一般化するような、長期的な傾向が数多くあります。イーサリアムは唯一のスマートコントラクトプラットフォームではなくなるでしょう。イーサリアムが消え去る、あるいは繁栄しないと言っているのではありません。イーサリアムが負け組になるとは思いません。しかし、イーサリアム以外のスマートコントラクトプラットフォームにも大きなチャンスがあります。イーサリアムは、すべてを支配する唯一のスマートコントラクトプラットフォームではありません。

更新 – 2018年5月9日

この記事を書いた後、スマートコントラクトプラットフォームにはネットワーク効果がほとんどないという前提は正しいものの、開発ツールが重要であり、スマートコントラクトプラットフォームはプログラミング言語のようだとの結論は間違っているという認識に至りました。開発ツールと機能もチェーンの間でコピーされます。

本稿のスピリチャルな続編ともいえる「ネットワーク効果と価値の貯蔵について」では、実質的にネットワーク効果を実現する唯一の方法は資産が価値の貯蔵手段と交換手段の両方になることだとの自説を紹介します。

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