フランチャイズは、食品小売業のモデルとして広く理解されています。マクドナルドやサブウェイのように、世界で最も古く、最も成功した小売食品ビジネスの多くは、フランチャイズです。
ChipotleやStarbucksなど新しい小売食品業は、フランチャイズモデルを採用しませんでした。証明はできませんが、インターネットの存在がこれを可能にしたと考えます。インターネットが登場する前は、地域ごとの微妙な違いや特質を考慮すると、世界中の数千の店を集中的に計画、開店、管理することはとても困難なことでした。インターネットはすべてを変えました。集中管理化された企業は、Googleマップ、豊富な小売・不動産データ、より緻密な人口統計データ、その他のツールを使って多くの都市で小売業を効率的に計画し成長させました。
インターネット企業がフランチャイズをしない理由はここにあります。インターネットから得たデータを活用して市場開拓戦略の決定、顧客獲得経路の管理、製品に工夫をしているのです。
しかし、暗号資産は関係するあらゆるものを分散化する傾向にあります。暗号資産は、ネットワークエッジに価値を加えます。
暗号資産において、フランチャイズ化型モデルを使って、届く範囲とビジョン達成の確率を最大化し、トークン保有者へのリターンを加速させている最高のプロトコルの2つの例を紹介します。
0x：オフチェーンオーダーブックによる分散型取引所
0xプロトコルは、ネイティブトークンであるZRXを持つ無料のオープンソースプロトコルで、リレイヤー（独立した企業）がチェーンで決済するオフチェーンオーダーブックをホストする方法を提供するものです。現在、0xプロトコルには約10のリレイヤーが構築されており、多くの場合、それぞれ互いに、また、PoloniexやBittrexなどの集中型取引所と直接競争しています。
リレイヤーは、0xチームに、0xプロトコルを使用するための手数料は支払いません。0xプロトコルは無料のオープンソースです。むしろ、オーダーブックのホスティングと引き換えにユーザーがリレイヤーに 0xのネイティブなZRXトークンで手数料を支払うため、リレイヤーはオーダーブックを構築し管理しようとします。
従来の集中型取引所に比べて、リレイヤーの運営コストは劇的に低いのが事実です。顧客資産を保管する集中型取引所とは異なり、0xのリレイヤーは送金サービス業者ではなくユーザーに取引先リスクを負わせることはありません。0xリレイヤーを「威力を増強したクレイグリスト」と考えることができます。0xリレイヤーは、オーダーブックをホストすることによって取引を希望する人に相手を探し、チェーンで直接取引できるよう両者を結び付けます。
0xのリレイヤーはユーザー資産を保管しないため、従来の「顧客を知る」（KYC）や反マネーロンダリング(AML)法 に適応するプロセスやインフラストラクチャの構築を必要としていません。集中型取引所は、ユーザーの資産を保管するため、こういった問題に対処しなければならない大規模なチームを有します。こうして、これは、0xのリレイヤーに、従来の集中型取引所に比べて大きなコスト優位性を与えます。
0xチームは、リレイヤーに依存します。もしリレイヤ ーがオーダーブックをホストしなければ、ZRXトークンは、有用なものではなく、そのため価値も持たなくなります。0xチームはその資産と時間を、リレイヤーが自身の運営を確立できるよう費やします。リレイヤーが立ち上がると、ユーザーを引き付けるように市場に出します。あらゆる0xのリレイヤーは、それぞれのオファーを独立して販売します。各リレイヤーは、マージントレーダー、手数料を重視するトレーダー、事前にパッケージングされたボットベースの取引を希望する人、高いAIPの制限など地球上のあらゆるニッチに対して、ユニークな商品とメッセージを開発できます。0xのリレイヤーにとって世界中のユーザーに自分たちの商品を差別化、競争、販売できる方法は多数あります。
ZRX保有者は、この競争から利益を得ます。リレイヤーは、マーケティングと消費者教育といった大変な仕事を担っています。0xチームとZRX保有者は、消費者に直接販売をすることに、お金、時間、またはエネルギーを使わない一方、リレイヤーが消費者を競い合い、ZRXトークンの需要を押し上げるため、ネットワークの拡大から利益を得ています。
FunFair：オンラインカジノ
FunFairは、ブラックジャック、クラップ、ルーレット、スロットマシンなど（マルチパーティーポーカーは無し）あらゆるゲームで「箱の中のカジノ」を生み出しました。各ゲームは証明可能な公正さを持っています。FunFairトークンであるFUNを使用してギャンブルをする消費者は、カジノは勝ち目に賭けておらず、その点を利用していないことを知っています（これは2000年代のオンラインカジノ第一波において大きな問題でした）。従来のカジノとは異なり、FunFairベースのカジノは消費者資産を保管することはありません。すべての儲けと損失は消費者とカジノ間でリアルタイムで送金されます。これは、カジノ側はより少ないリスクと責任を負い、消費者側は取引者リスクを負わないといった両者に有利な状態です。
カジノ運営者は、FunFairチームが構築したものを非常に低コスト（おそらく無料）で引き上げることができます。そしてカジノ運営者は、カジノの備蓄や消費者を呼び込むために資金をFUNトークンとしてステークします。それだけです。FunFairプロトコルは、ゲームロジック、乱数生成者、支払いなど他のすべてを扱います。FunFairはチェーン上で実行されるため、オンラインカジノはアカウント作成を処理する必要はありません（しかし、他の機能を有効にするためにこれを追加することはできます）。
今後、多くの小規模なチームがオンラインカジノを立ち上げ、運営するケースが続出すると思われます。これらのチームはマーケティングと顧客獲得に専念するでしょう。一晩で何十も現れるでしょう。資金を持っていなくとも、FunFairプロトコルが、彼らがカジノとして機能することで利益を生み出すことを保証するため、友人や家族から資金を簡単に調達することができます。ビジネスはすぐに顧客獲得競争になるでしょう。これらのチームは、あらゆるマーケティングメッセージと顧客獲得チャネルをA/Bテストします。そしてあらゆるニッチに対応することでしょう。ひとつの組織では、決してこういったことは不可能です。しかし、100チームならどうでしょう。彼らは、すべてを試してみるでしょう 。
一方、カジノ運営側が消費者を教育・獲得するために激しく競争するにつれ、FunFairのトークン保有者はメリットを享受することになります。何よりも、FUN保有者は、実験が失敗した場合のマイナスリスクを直接負担することはありません。カジノオ運営者が顧客獲得に過剰に支出し、顧客からの長期的な収益が顧客獲得コストよりも低くなる場合、個々のカジノ運営者が利益を享受しなくともFUN保有者は恩恵に預かります。
暗号資産フランチャイズと旧来のフランチャイズの比較
前述の暗号資産フランチャイズモデルは、従来の小売フランチャイズモデルよりも実際に優れています。小売フランチャイズモデルでは、ハブ組織はフランチャイズ事業者から収益や利益の一部を徴収したり、その他の制限を課します。暗号資産のフランチャイズモデルでは、ハブ組織はフランチャイズ事業者に全く代金請求をしません。ICOにより、最もリソースを持っていると見られるハブ組織は、実はフランチャイズライセンサーの設立をできるだけ迅速かつ効果的にするのをサポートするためにコスト投入するように動機づけられています。
このような動きは、現在の暗号通貨のエコシステムで見られます。0xチームは、リレーヤー立ち上げのためにリレイヤーと緊密に協力し、補助金も提供しています。予想したよりもはるかに多くの資金を調達（ICO時点では約2億3,000万ドル、現在は約4億ドル相当）したTezosは、Tezosプラットフォーム上に構築されたプロジェクトに投資するためのファンドを発表しました。EOSはまだ何も発表していませんが、長年のICOを通じて約3億ドルを調達したことを考え ると、似たようなことを行う可能性があると見られます。
こういったネットワークは、今まで不可能だったインセンティブ構造を生み出しました。新しいインセンティブ構造の中で、ネットワーク参加者は、あらゆる方法でイノベーションを起こし、価値獲得とネットワーク拡大のための新しいパラダイムを生み出すでしょう。それは小売りフランチャイズ業を彷彿とさせるような点も少々ありますが、多くの点で暗号資産の特性を基準にしたものといえます。
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